老年歯科医学
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在宅歯科医療の問題点地域総合病院における往診診療
奥山 秀樹
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1993 年 7 巻 2 号 p. 121-127

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抄録

高齢化社会を迎え, 老人人口が増加するとともに日常生活において自立の困難な在宅寝たきり老人も増加している。こうした在宅寝たきり老人を対象に佐久市立国保浅間総合病院歯科口腔外科では行政との協力を基礎に1983年より歯科診療を続けてきた。
当科で診療を行なった寝たきり者は, 一日中寝たきりという重度の者より室内やベット上での移動が可能な比較的軽度あるいは中等度の寝たきり者が多かった。また全身的合併症は脳血管後遺症が66%と最も多かった。
口腔内の状況として現在歯が少なく, 義歯が充分に機能していない者が約半数であった, また口腔清掃状態が不良の者が多かった。
治療は訪問診療を中心に外来診療や入院診療を取り入れて行なった。治療内容は義歯に関する処置が最も多く84.5%の者に行なった。その他の処置はいずれも少なかった。
在宅歯科医療の効果として口腔機能の改善が最も著明であったが, 精神面や身体面での効果も少なくなかった。
こうして在宅歯科医療を実施していく中で様々な問題点があるが, 全身的偶発症を起こす可能性があるということが最も大きな問題点と思われた。その対応として在宅歯科医療の適応を指導的内容と, 義歯を中心とした非観血的処置に限りその他の処置や手術はできるだけ診療室へ搬送したり, 入院下で診療するべきと思われた。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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