日本消化器がん検診学会雑誌
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原著
繰り返し内視鏡検査による胃がん死亡率減少効果
細川 治服部 昌和武田 孝之
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2008 年 46 巻 1 号 p. 14-19

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抄録

施設における胃がん検診が内視鏡に転換して久しいにもかかわらず, 内視鏡検査で胃がん死亡率が減少したという報告はなく, 2006年に公表されたガイドラインでは内視鏡検査はがん検診として推奨されないとされた。今回の研究では, 届け出精度の高い地域がん登録を利用することにより, 内視鏡検査の胃がん死亡率を検証することを目的とした。1993年に胃内視鏡検査を受けた50歳以上被検者のうち, 2,310例は1994年から1996年までの期間に再度内視鏡検査を受けて胃がん陰性であった。残り2,579名はこの期間に内視鏡検査を受けなかった。これら4,889名の被検者をわが国で最も届け出精度の高い福井県がん登録と照合した。1997年以降に再検査群から40例(1.7%)の胃がんが診断され, 2名が胃がん死亡し, 非再検査群から49例(1.9%)の胃がんが診断され, 11例が胃がん死亡した。胃がん患者の累積5年死亡率はカプランマイヤー法で再検査群5.1%, 非再検査群24.7%と算出され, 有意差が認められた(p<0.05)。胃がん相対危険度は0.20(95%信頼区間0.04─0.91)であり, 内視鏡再検査は胃がん死亡を80%減少させることが示唆された。しかし, 検査後死亡率減少効果出現までには長期間を要した。

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© 2008 一般社団法人 日本消化器がん検診学会
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