2009 年 47 巻 4 号 p. 431-435
約11万人の地域住民を対象としてコホート研究のデータを用いて喫煙, 飲酒と膵がん, 胆嚢がんの関係を分析した結果の検診への応用を検討した。男性では, 喫煙が膵がんと胆嚢がん, 飲酒が胆嚢がんのリスクを有意に上昇させる結果が得られ, 最大曝露群は非曝露群に比べて, いずれも約3.2倍リスクが高かった。女性では, 喫煙について有意でないが男性と同様の関連を示唆する結果が, 飲酒については関連がないことを示唆する結果が得られた。3倍程度のリスクの違いでは, 喫煙習慣, 飲酒習慣を単独で対象者のスクリーニングに用いることは難しい。むしろ, 曝露群をハイリスク群として, 検診受診を特に強力に勧奨する手段として用いる方が実際的である。喫煙, 飲酒と膵がん, 胆嚢がんの関係を周知することは, 喫煙や飲酒に関連する疾患の予防にも役立つと思われる。血清タンパク, 遺伝子多型など, 新たなマーカーの検診への導入の検討も今後の課題である。