抄録
沖縄県においては, わが国では通常に実施されている間接X線撮影装置による胃がん検診を受けたくても受けられない地域が現在もある。そこで, 琉球大学病院の消化器グループは, 昭和56年の開設当初より, 地域医療に貢献すると同時に疫学的研究や地域医療のあり方に関する臨床研究の立場から, 離島における上部消化管内視鏡検査による食道・胃がん検診をスタートした。平成元年度末までに9離島で6,444名の島民に延べ7,082件の内視鏡による胃がん検診を実施した。治癒可能な6例の食道癌, 18例の早期胃癌を発見した。与那国地区においては5回の内視鏡による胃がん検診で7例の癌が発見・治療された後, 間接X線検査による胃がん検診が行われているが, 胃癌の発見は8年間で1例もなかった。
わが国では老人保健事業に基づいて平成4年度から大腸がん検診が行われていたが, 大腸内視鏡検査による精密検査の対応が十分でないとの理由で八重山地区では平成8年度まで大腸がん検診が実施されていなかった。そこで, われわれは, 5週間の土・日曜日を返上して180名の要精検者の全大腸内視鏡検査を現地へ出張して行った。早期癌11例を含む大腸癌23例を発見した。
しかし, 沖縄県のみならずわが国全体の重要な課題として, 現在のがん検診システムにおいても治癒可能な早期癌の発見が行われているにも関わらず, 受診率および精検受診率の低迷があることである。