日本消化器がん検診学会雑誌
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49 巻, 2 号
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会長講演
  • 金城 福則
    2011 年 49 巻 2 号 p. 205-217
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/15
    ジャーナル フリー
    沖縄県においては, わが国では通常に実施されている間接X線撮影装置による胃がん検診を受けたくても受けられない地域が現在もある。そこで, 琉球大学病院の消化器グループは, 昭和56年の開設当初より, 地域医療に貢献すると同時に疫学的研究や地域医療のあり方に関する臨床研究の立場から, 離島における上部消化管内視鏡検査による食道・胃がん検診をスタートした。平成元年度末までに9離島で6,444名の島民に延べ7,082件の内視鏡による胃がん検診を実施した。治癒可能な6例の食道癌, 18例の早期胃癌を発見した。与那国地区においては5回の内視鏡による胃がん検診で7例の癌が発見・治療された後, 間接X線検査による胃がん検診が行われているが, 胃癌の発見は8年間で1例もなかった。
    わが国では老人保健事業に基づいて平成4年度から大腸がん検診が行われていたが, 大腸内視鏡検査による精密検査の対応が十分でないとの理由で八重山地区では平成8年度まで大腸がん検診が実施されていなかった。そこで, われわれは, 5週間の土・日曜日を返上して180名の要精検者の全大腸内視鏡検査を現地へ出張して行った。早期癌11例を含む大腸癌23例を発見した。
    しかし, 沖縄県のみならずわが国全体の重要な課題として, 現在のがん検診システムにおいても治癒可能な早期癌の発見が行われているにも関わらず, 受診率および精検受診率の低迷があることである。
原著
  • 登田 尚敬, 関口 利和, 中野 正美, 高澤 信, 成田 忠雄, 小島 章
    2011 年 49 巻 2 号 p. 218-227
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/15
    ジャーナル フリー
    市の事業として車検診による集団胃がん検診を実施してきたが, 昭和61年をピークに徐々に受診者が減少してきた。その対策として太田市医師会は個別検診の導入を提案し, 平成11年から委託された。
    個別検診では直接X線検診か内視鏡検診のいずれかを選択でき, ペプシノゲン法も参考資料として測定した。よって対象者は車検診の間接X線検診も含め3方法を選択できる。個別検診導入前の平成10年受診者数は6,409人であった。導入後, 個別検診は年々増加し, 開始から9年経た平成19年には胃検診10,955人のうち個別検診者は83%を占め, うち内視鏡受診者は88%を占めるようになった。カバー率は17.3%となった。車検診及び個別検診ともに女性の受診者が60%を超え, 年令は男女とも個別検診の方が約10歳高齢であった。胃がん発見率は車検診で0.23%, 個別検診の直接X線検診で0.20%, 内視鏡検診で0.61%であった。
    発見胃癌151例中, ペプシノゲン陽性を示したものは75.5%であった。3検診方法の発見癌1例あたりの費用は, 内視鏡検診が最も安価で240万円であり, 次いで車検診で345万円, 直接X線検診は571万円であった。個別検診は今後とも受診者数の増加が予想されるが, その有効性評価に直結した質の高い研究の実施が望まれ, また検診の受け皿としての医療機関や人材の確保が急務と考える。
  • 淵脇 崇史, 石本 裕二, 脇田 慎一, 西 憲文, 伊原 孝志
    2011 年 49 巻 2 号 p. 228-236
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/15
    ジャーナル フリー
    新・撮影法より, 胃X線画像の画質・精度が向上した報告がなされている。しかし, 撮影される胃X線画像では, 施設間あるいは撮影者間での格差があるのが現状と思われる。そこで胃X線基準撮影画像について, 視覚評価のひとつである造影効果を中心に基準となる画像を作成し(A~Eの5段階), 鹿児島消化器画像研究会に参加している3施設にて, 計60例(各施設20例)を対象とし, 胃X線画像の造影効果の評価・検討を行なった。施設間には撮影画像に格差を生じており, 良好な画像(評価A・B)に対して検討すると, U領域では施設2と施設3で45%の差があり, L領域では施設2と施設3で45%の差があった。格差を生じた主な原因は撮影手技の違いであった。基準画像を決めることで, 複数の施設が良好な画像に対する共通の意識を持ち, 撮影手技を考えることで画像精度の向上に繋がると思われる。
  • 鯵坂 秀之, 小山 文誉, 魚谷 知佳
    2011 年 49 巻 2 号 p. 237-242
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/15
    ジャーナル フリー
    胃内視鏡検診の精度を評価するために, 2006年9月から2009年8月までの内視鏡検診発見胃癌42例のうち, 逐年内視鏡検診の既往を持つ“広義偽陰性例”20例を対象に, 臨床病理学的特長を検討するとともに, 前年度の記録を見直した。肉眼型は全例早期陥凹性病変(O-IIc 18例, O-IIb+IIc 1例, O-IIa +IIc 1例)であった。組織型は分化型が12例(tub1 9例, tub2 3例), 未分化型が8例(sig 5例, por 2例, muc 1例), 最大腫瘍径は16例が25mm以下であったのに対し, 4例は37mm・43mm・47mm・81mmと突出していた。壁深達度/リンパ節転移はM/N0が17例, SM1/N0・SM2/N0・M/N2が各1例ずつであった。前年度の記録を見直した結果, “非狭義偽陰性例”(前年度顕性病変なし)は5例, “見落し例”(前年度記録なし)は4例, “見逃し例”(前年度病変あり)が8例, “生検不備例”(前年度生検にて非悪性と判断された)が3例であった。内視鏡検診でも偽陰性があり, 逐年受診を勧めることが重要である。
  • 相田 佳代, 吉川 裕之, 濱田 理一郎, 望月 千博
    2011 年 49 巻 2 号 p. 243-251
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/15
    ジャーナル フリー
    近年, 細径・極細径内視鏡(以下, 細径)を用いた胃内視鏡検診が増加しているが, その有効性については不明な点が多い。そこで, 2002年4月からの7年間に任意型検診で施行した上部消化管内視鏡検査(計14,075件)を対象にして, 細径の胃がん診断成績について検討した。使用されたスコープ機種別に通常スコープ(以下, 通常)群と細径群の2群に分けると, 発見率(通常群0.37%, 細径群0.2%)および早期がん比率(通常群86.7%, 細径群83.3%)には有意差はなかった。また発見胃がん33例中19例(57.6%)に内視鏡検診歴を認めたが, 細径群の粘膜内がん比率は通常群に比べて低く, さらに前回所見の遡及的検討から, 細径で拾い上げられなかった病変を6例(31.6%)認めた。従って, 内視鏡治療可能な粘膜内がん発見のためには, 細径の精度管理についてさらに検討が必要と考えられた。
  • 松田 徹, 門馬 孝, 大泉 晴史, 深尾 彰, 河田 純男, 芳賀 陽一, 鞍掛 彰秀, 白田 一誠, 成沢 信之助, 穀野 真一郎, 齋 ...
    2011 年 49 巻 2 号 p. 252-259
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/15
    ジャーナル フリー
    山形県におけるがん検診受診率は全国的には高いものの, 明らかな死亡率低下のためには不十分である。受診率向上には種々の方法があろうが, 本県の情況を検討した。本県のがん検診受診率向上に向けた対策の中で, 市町村や事業所に対して実施したがん検診に関するアンケート調査, 著効例や, がん検診に関してのニュースレター, 受診率向上への保健所の関わりなども示した。これらの結果から今後の対策のあるべき方針を示し, がん検診未受診者に対する再受診勧奨と, がん検診の申込みの時点での勧奨, 再勧奨も重要であることを示した。
経験
  • 野津 聡
    2011 年 49 巻 2 号 p. 260-265
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/15
    ジャーナル フリー
    大腸ポリープ診断支援ソフトsyngo Colonography Polyp Enhanced Viewing陰性の10mm以上の腺腫または癌(PEV陰性病変)を有する9症例を対象とし, Colon VCARを用いてCTコロノグラフィーにおける最新の診断支援ソフトの有用性を評価した。解析の結果, レスポンス閾値を3mmに設定すると全てのPEV陰性病変が指摘され, 臨床的に同定された3mm以上のポリープに対する感度は93.1%(29病変中27病変)であった。一方, 仰臥位で平均4.0個, 腹臥位で2.6個の偽陽性病変が指摘された。以上, 最新の診断支援ソフトは, 設定により3mm以上の大腸病変に対して90%以上の指摘が可能でCTコロノグラフィーによる大腸癌スクリーニングに十分な読影感度と考えられる。また, 偽陽性病変は2次読影により減少させることが必要であるが, それにはタギング剤の併用が役立つと考えられる。
症例報告
地方会抄録
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