2016 年 54 巻 3 号 p. 418-424
患者は78歳, 女性。心窩部不快感を主訴に施行した上部消化管内視鏡検査にて, 胃体上部後壁に拡張した血管増生を伴う褪色調の0-IIa+IIc病変を認めた。NBI併用拡大観察では病変部の微小血管構築像に不整を認めたが, 表面微細構造の不整は乏しく癌の診断は困難であった。内視鏡所見および生検組織所見より胃底腺型胃癌を疑い, ESDを施行した。病理組織学的には, 粘膜中層から粘膜深層を中心に主細胞に類似した腫瘍細胞が不整な腺管を形成して発育しており, わずかに粘膜下層へ浸潤していた。免疫染色ではMUC6およびpepsinogen-Iが陽性であり, 胃底腺型胃癌(主細胞優位型)と診断した。同病変は7年5か月前の内視鏡検査時より指摘されていたが, 血管性病変や粘膜下腫瘍と診断されていた。本腫瘍は従来の胃癌とは異なる内視鏡像を呈することが注目されているが, 褪色や拡張した血管増生は本腫瘍の典型的所見であり, 内視鏡スクリーニングにおいて注意すべきと考えられた。