2024 年 52 巻 2 号 p. 116-122
くも膜下出血(SAH)の発症時に頭部外傷を合併し,臨床経過から外傷性SAHとの鑑別を要した破裂末梢性中大脳動脈瘤(d-MCA An)の1例を経験した.症例は52歳女性,自転車で走行中に転倒し搬送された.CTでは右シルビウス裂を中心にSAHを認め,頭蓋骨骨折を伴う多発外傷を合併していた.急性期に脳血管撮影を行ったが,出血源を認めなかった.保存的経過観察中に検査を繰り返し,発症17日目にd-MCA Anが確認された.真性動脈瘤の発生部位としてはまれなため,外傷性動脈瘤も否定できず動脈瘤のtrappingを行ったが,病理検査で真性動脈瘤と診断された.術後経過は良好で,神経脱落症状なく退院した.臨床経過や画像所見から,外傷性SAHと動脈瘤性SAHの鑑別が困難な症例にときに遭遇する.本論文では両者の相違点,初回血管撮影で偽陰性の動脈瘤性SAH,発生部位としてまれなd-MCA Anへの外科的治療戦略を中心に検討し報告する.