日本消化器がん検診学会雑誌
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会長講演
便潜血検査とシグモイドスコピーを併用した対策型大腸がん検診
野崎 良一
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2017 年 55 巻 4 号 p. 523-536

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抄録

当施設は便潜血検査(FOBT)とシグモイドスコピー(FS)併用による大腸がん検診を全国に先駆けて1983年から地域集団ベースで実施してきた。1988年からは他には類をみない内視鏡検査一式を搭載した大腸がん検診車による巡回FS検診を実施した。1992年からは便潜血検査免疫法(FIT)2日法, FSには細径電子内視鏡を使用した。1983年から2014年までの32年間に実施した検診受診者総数は, FOBT1,952,565人で, そのうちFSは319,418人であった。これまでに大腸がん3,551例(粘膜内がん1,705例, 浸潤がん1,846例)を発見した。検診データに基づいてFOBTとFS併用検診の意義について論じた。1)FIT2日法にFSを併用することで約2倍の大腸がん発見が期待された。特に初回受診ではがん発見率が高く, 併用効果は大きかった。2)浸潤がんの結果で感度91%, 特異度83%であった。感度では, FIT2日法とFS併用はFS単独よりも約20%, FIT2日法よりも約10%の上乗せ効果があることが推定された。3)地域集団をベースとした症例対照研究の結果からFOBTとFS併用検診の有効性すなわち大腸がん死亡リスク減少効果が示唆された。特に下部大腸がん死亡リスクの減少が大きかった。費用効果, マンパワー不足, 偶発症などの課題はあるが対策型検診にFS検診を導入する意義は大きいと考える。

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© 2017 一般社団法人 日本消化器がん検診学会
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