2025 年 63 巻 3 号 p. 375-382
がんは遺伝子変異によって発症する疾患であり, 同じがん種でも患者ごとに異なる遺伝子変異を持つ。この遺伝子を包括的に解析し, 治療や診断に活用する医療が「がんゲノム医療」であり, 中心となる検査ががん遺伝子パネル検査である。この検査は2019年6月に保険適用され, 2024年10月末までに89,000件以上が実施されている。
がん全体の約5~10%は遺伝性腫瘍とされ, がん遺伝子パネル検査で発見される遺伝子変異の一部は生殖細胞系列に由来し, 血縁者も同様の発症リスクを有する可能性がある。このため, 未発症の保因者に対するきめ細かな定期的な検査(サーベイランス)が求められるが, 医療機関へのアクセスが難しい点が課題となっている。本稿では, 国内におけるがんゲノム医療の現状とがん遺伝子パネル検査の運用およびその課題を概観し, 遺伝性腫瘍に対するサーベイランスの重要性を通じて, がんゲノム医療とがん検診の接点について考察する。これにより, 今後のがん予防や早期発見における新たな展望を提示する。