2025 年 63 巻 3 号 p. 383-388
【目的】Helicobacter pylori除菌前後の血清抗体価をラテックス凝集比濁法のH.ピロリ-ラテックス「生研」(デンカLA)により測定し, 除菌前の抗体価と除菌後の血清抗体価の陰性化までの期間の関連および抗体価の除菌判定における有用性について検討した。
【対象と方法】青森県の多施設共同研究に登録され, 除菌後6年まで観察し得た38例を対象とした。登録時および経過観察時に抗体価を測定した。抗体価の中央値で高値群と低値群に分類し, 抗体陰性化までの期間を比較し, 抗体価の変化の除菌判定における有用性についても検討した。
【結果】高値群19例のうち9例が6年目までに陰性化し, 陰性までの期間は37.6±20.8ヶ月であった。低値群19例では16例が陰性化し, 陰性までの期間は21.3±16.2ヶ月であった。高値群で有意に陰性化までの期間が長く, 低値群で有意に抗体陰性化が得られた。38例中33例で除菌1年後に抗体価を測定しており, 抗体価が半分以下になった症例は31例(93.9%)であった。
【結語】デンカLAでは, 除菌前に抗体価が高値の場合には除菌後も血清抗体陽性が持続しやすく偽陽性に注意が必要である。除菌前後の抗体価の比較は除菌前の抗体価にかかわらず除菌判定に有用であると考えられる。