2025 年 63 巻 3 号 p. 337-356
本邦で胃がん検診が始まって60年あまりとなる。現在は死亡率減少効果が科学的に証明されている胃X線検査と胃内視鏡検査の2つが対策型胃がん検診として提供されている。対策型胃がん検診の実施に当たっては, 国は厚労指針に基づいた胃がん実施体制の整備や精度管理を求めており, 本学会が策定する胃X線検診や胃内視鏡検診マニュアルは胃がん検診の精度管理体制の構築や標準化に大きく寄与してきた。しかしながら, 胃X線検診と胃内視鏡検診にはそれぞれ特有の精度管理上の問題点を抱えており, 職域での実施を含めて, 2つのモダリティーを適正に管理していくことはなかなか難しい。胃癌は罹患率・死亡率とも減少傾向にあるなかで。従来型の胃がん検診の提供体制は非効率的になりつつある。胃癌のリスク因子であるHelicobacter pylori(H.pylori)感染状況を考慮したリスク層別化検診やDigital Transformation(DX)化の推進, Artificial Intelligence(AI)の活用などのイノベーションに期待されるところである。