2026 年 64 巻 1 号 p. 50-57
自己免疫性胃炎(AIG)は, 胃酸分泌細胞に対する自己免疫応答によって発症する慢性炎症性疾患であり, 神経内分泌腫瘍や癌の発癌母地となることが知られている。本研究では, AIGの病態をDNAメチル化解析および網羅的遺伝子発現解析の両面から明らかにした。網羅的DNAメチル化解析では, AIG粘膜において正常粘膜と比較して広範なDNAメチル化異常が認められ, 発癌ポテンシャルを有すると考えられた。一方, ピロリ菌感染胃炎(HPG)粘膜と比べるとメチル化異常蓄積の程度は軽度であり, 実際の発癌リスクの差を反映していると考えられた。一方, 網羅的遺伝子発現解析では, AIGでは小腸特異的遺伝子の異所性発現が顕著であり, 実際の腸上皮化生の認める頻度の高さに一致していた。さらに, AIG粘膜では膵臓および肺特異的遺伝子の発現も認められ, AIGによる多様な異所性分化誘導が示された。メカニズムとして, AIGに伴う著明な胃内pH上昇がこれらの分化異常に関与する可能性も示された。本研究は, AIGにおける特異なDNAメチル化異常と分化誘導を初めて包括的に示すものであり, 今後の診断・予後予測や病態制御へ繋がることが期待される。