2026 年 64 巻 4 号 p. 756-763
症例は60歳代男性。4年前より嚥下困難,嘔吐,就寝時の咳嗽を自覚していた。前医CTで食道拡張を指摘され,精査加療目的に当科を紹介受診した。高解像度食道内圧検査よりDistal esophageal spasm (DES) と診断したが,上部消化管内視鏡検査で胸部中部食道に50mm大の0-IIc病変を認め,生検で食道癌の合併と診断した。治療方針としてDESに対してはPeroral endoscopic myotomy (POEM) を,食道癌に対しては二期的にEndoscopic submucosal dissection (ESD) を施行した。POEMでは食道癌肛門側と重ならないよう切開ラインを調整したことで,食道ESD時に線維化を避けることが可能であった。術後造影でバリウム停滞は消失,症状も改善し,早期食道癌についても治癒切除であった。本症例では切開ラインの工夫によりDES,食道癌ともに低侵襲治療を安全に完遂できた。検診などを契機に食道運動障害が発見されることが報告されており,食道癌併発も念頭においた慎重な内視鏡検査と治療計画が求められる。