2000 年 38 巻 1 号 p. 16-22
職場での総合検診で胃X線検査または内視鏡検査にて胃・十二指腸病変を認めない477例 (男性337例, 女性140例) を対象にして, 血清抗H.pylori抗体価および血清ペプシノゲン値を指標に, H.pylori感染と萎縮性胃炎および加齢との関連性について疫学的に検討した。その結果, 抗H.pylori抗体陽性例では, 血清ペプシノゲン1値は陰性例と比べて高値を示し, 加齢とともに軽度低下傾向を示した。血清ペプシノゲンII値は抗H.pylori抗体陽性例では, 陰性例の約2倍の有意な高値を示し, 血清ペプシノゲンI/II比を有意に低下させる要因といえる。胃粘膜萎縮は明らかに抗H.pylori抗体陽性例に多く, 加齢とともに増加した。しかし, これは単なる加齢性変化ではなく, H.pylori感染期間の長さによる影響を, 年齢との関係で捉えていることが考えられた。