抄録
平成1年から行われている金沢市の大腸がん個別検診において, カットオフ値を160ng/mlとした免疫便潜血検査により, 過去10年間に早期95例, 進行81例の計176例のがんが発見された。また受診率は当初より16%台で, 要精検率はほぼ7%前後, 精検受診率は75%程度で推移していた。さらに平成9年度, 10年度の便潜血陽性症例について, 精密検査の結果よりがん症例, 有所見非がん症例, 異常なしに分け, 便潜血定量値の平均より検討したところ, 早期がんでは約1,000ng/ml, 進行がんでは約1,600ng/ml, 有所見非がん症例では600ng/ml以下, 異常なしと診断された症例では500ng/ml以下という結果で, がん症例では非がん症例より, 進行がんでは早期がんより高値を示していた。以上のことより今後のこの検診の精度向上を考える上では, 逐年受診の指導と精検受診率の向上および便潜血定量値で高値を示した症例に対しては特に強い精検受診勧奨と慎重かつ正確な精密検査が必要であると考えられた。