日本消化器がん検診学会雑誌
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間接X線検査による胃集検における偶発症
渋谷 大助今野 豊相田 重光加藤 勝章島田 剛延
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2006 年 44 巻 3 号 p. 251-258

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抄録

間接X線による胃がん検診に関わる偶発症について検討した。当施設で高濃度低粘性バリウムを使用し始めた平成10年度から平成14年度までの5年間に1,012,976人が胃がん検診を受け, 118例の偶発症が発生した。内訳はバリウムの誤嚥100例 (0.0099%, 入院3例), 腸閉塞4例, 吐気・嘔吐8例, 便秘4 例, めまい1例, 上腕擦過傷1例であった。重症化が懸念される偶発症は誤嚥と腸閉塞であった。誤嚥は男性・高齢者に多いが, それ以外に施設入所者などの知的障害者, 複数回誤嚥者, 咽頭手術後, 脳梗塞, パーキンソンなどが危険因子として重要であり, 誤嚥を起こし易い人は内視鏡検査への誘導を行なうべきであると思われた。腸閉塞では4例中3例が腸管穿孔をきたしており, 発症すると重症化する。やはり高齢者に多いが, 誤嚥と違って女性に多い。腸閉塞の既往歴, 水分摂取の制限が必要な受診者はX線検査の禁忌と考えられ, 注意深い問診と検査後の水分摂取の指導が必要である。高濃度バリウムの使用により発疹などの過敏症状例の増加は認められなかった。今後, 高齢者の増加に伴い, 注意深い問診, 水分摂取などの適切な指導, 検診の利益, 不利益に関するインフォームド・コンセントの他に, 内視鏡検査を含めた個別検診への誘導や検診対象の制限なども必要であると考えられた。

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© 社団法人 日本消化器がん検診学会
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