日本婦人科腫瘍学会雑誌
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症例報告
診断に苦慮した悪性腹膜中皮腫の一例
竹内 正久井上 貴史井ノ又 裕介川上 穣嶺 真一郎中村 聡
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2022 年 40 巻 1 号 p. 17-23

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抄録

悪性腹膜中皮腫の診断には病理学的に中皮細胞起源であることと,悪性であることを示す必要がある.前者の免疫組織学的検査法はほぼ確立されているが,後者については未だ確立されていない.今回我々は再発病巣の摘出標本により悪性腹膜中皮腫の診断に至った症例を経験した.症例は52歳,0妊0産,閉経50歳.子宮筋腫,変性痛の術前診断に対して開腹術を施行し,ダグラス窩に嵌入した脆弱な壊死した腫瘤を認めた.腫瘤の免疫染色でBAP1 lossとMTAP lossを認めずmesothelial hyperplasiaと診断し外来経過観察の方針とした.術後24カ月で腰背部痛を主訴として当院を再診した.造影CT検査で腫瘍性病変の播種を疑う所見を認め,開腹での組織生検術を施行した.摘出標本の免疫染色でBAP1 lossとMTAP lossを認めmalignant mesothelioma,epithelial typeと診断した.両手術標本で特異的な遺伝子変異に基づいた免疫染色法を施行したが,結果は対照的であった.しかし,臨床的経過と両者の組織像の類似性を考慮すると,初回摘出標本も悪性中皮腫であったと考えられた.

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© 2022 日本婦人科腫瘍学会
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