2022 年 40 巻 3 号 p. 173-178
PARP(poly(ADP-ribose)polymerase)阻害薬使用中の治療関連骨髄腫瘍はまれではあるが遭遇しうる合併症である.今回,末梢血中に芽球や異型細胞の出現を認めなかったが,遷延する貧血と血小板減少があり治療関連白血病の診断に至った一例を経験したため報告する.症例は61歳,卵巣癌に対してdose dense TC療法(カルボプラチン,パクリタキセル)3コース施行後にIDS(Interval debulking surgery)を行い,術後TC療法を6コース施行して完全奏効を確認したが3年後に下腹壁皮下と肝臓に再発し,TC療法4コース施行後に再発皮下病変を完全切除し術後TC療法を3コース施行してolaparib維持療法を開始した.Olaparib開始4カ月目より貧血と血小板減少が遷延し,頻回の輸血を要するようになったため,末梢血中に芽球や異型細胞の出現はなかったが骨髄穿刺を行ったところ治療関連白血病の診断に至った.PARP阻害薬使用中の血球減少は治療関連骨髄腫瘍の合併の有無の判断に苦慮するが,血球減少が遷延する場合には早めの骨髄生検を検討するべきである.