2023 年 41 巻 2 号 p. 227-234
目的:当科で導入したドキソルビシン心毒性に対する定期的な心機能評価の有用性を検討する.
方法:子宮体癌の術後補助療法としてドキソルビシン+シスプラチン療法(以下AP療法)を行った症例を対象とした.心機能の定期評価として心臓超音波検査をAP療法開始前,3サイクル後,全サイクル後,終了6カ月後に行った.定期評価導入前後での心毒性の診断契機,および心毒性診断症例のEjection Fraction(以下EF)変化について後方視的に比較検討した.
結果:心毒性と診断したのは定期評価導入前群7/144例(4.9%),導入後群8/57例(14.0%)であった.このうちEF低下から診断した無症候性心毒性の診断割合は導入前群2/7例(28.6%),導入後群7/8例(87.5%)と導入後群で有意に高かった(p=0.041).心毒性に対する治療後のEFの中央値は導入前群38%,導入後群54%と導入後群で有意に高かった(p=0.028).
結論:定期評価の導入により心機能低下が重篤化する症例が減少する可能性が示唆された.無症候性診断症例の増加が重篤化症例を減少させた要因の一つと考えられた.