2023 年 41 巻 2 号 p. 235-241
臓器移植後は免疫抑制剤の使用が必要不可欠であり,それによる悪性腫瘍の発生頻度の上昇,免疫抑制剤による発癌が指摘されている.今回,生体腎移植後2年で免疫抑制剤投与下にHPV関連腫瘍と思われる小細胞神経内分泌癌(Small cell neuroendocrine carcinoma)の子宮頸癌を発症し極めて不良な経過を辿った症例を経験した.初診時より肝転移など多発遠隔転移を伴うIVB期で高度な低ナトリウム血症を認め,腫瘍性抗利尿ホルモン不適合分泌症候群の可能性を考慮し治療を行ったが急速な病状進行に伴い腎不全となり,化学療法を施行するに至らず腫瘍死となった.近年の移植医療の発展とともに明らかとなってきた免疫抑制剤と悪性腫瘍の関連,癌スクリーニング検査,またHPVワクチンおよび検査の必要性についても文献的考察を加え報告する.