2023 年 41 巻 3 号 p. 264-269
高カルシウム血症型卵巣小細胞癌(Small-cell carcinoma of the ovary, hypercalcemic type:SCCOHT)は若年女性に好発する稀な腫瘍であり,予後は極めて不良である.今回,小児期に初回治療を行い,その16年後に対側卵巣に発生し異時性多発と考えられたSCCOHTの1例を経験したため報告する.症例は30歳,未妊.14歳時に卵巣原発primitive neuroectodermal tumor(PNET)に対して左付属器摘出術および術後化学療法(vincristine+cyclophosphamide+etoposide+cisplatin)を施行され,以後再発なく経過していた.30歳時に腹痛を主訴に受診し,11 cm大の右卵巣腫瘍を認めPNETの再発が疑われた.腫瘍減量手術を施行したが,腹腔内に1 cm未満の播種が遺残した.病理診断でSMARCA4/BRG1の免疫染色の結果からSCCOHTと診断され,初発時の病理組織を再検討した結果同様の病理所見であり,異時性多発と考えられた.cisplatin+etoposideによる術後化学療法を2コース施行したがPDとなり,術後3カ月半で原病死に至った.小児期に発症した悪性卵巣腫瘍はSCCOHTを鑑別に挙げて診断・治療を行い,異時性再発のリスクがあるため長期間の継続的な観察が必要であることが示唆された.