2023 年 41 巻 3 号 p. 258-263
術後乳糜胸水は胸部外科領域より多数報告があるが,婦人科領域では国内外から報告はない.卵巣癌傍大動脈リンパ節郭清後に乳糜胸水を生じ,保存的加療で治癒した2例を経験したため報告する.
【症例1】45歳,既往特記なし.傍大動脈リンパ節郭清を含めPDS施行し卵巣高異型度漿液性癌IIIA1期pT2aN1bM0と診断.術後6日目に咳嗽と背部痛があり右胸水貯留を認めた.利尿薬で改善なく12日目に胸腔ドレーン留置,乳糜胸水の診断で保存的加療した.48日目にドレーン抜去し再貯留なく経過.
【症例2】44歳,既往特記なし.PDS施行し卵管高異型度漿液性癌IIIA1期pT2aN1bM0と診断.術後6日目に呼吸苦と右胸水貯留を認め利尿薬投与するも,8日目に胸水増加し胸腔ドレーン留置.乳糜胸水の診断で保存的加療したが改善なく,35日目にリンパ管造影を施行するも破綻部は同定されなかった.ドレーン管理下に化学療法施行,術後約半年でドレーン抜去,再貯留なく経過した.乳糜胸水を呈した原因として,腹部大動脈周囲から横隔膜脚へ向かうリンパ管の走行が報告されており,その存在により本症例のような病態を生じうると推察された.