日本婦人科腫瘍学会雑誌
Online ISSN : 2436-8156
Print ISSN : 1347-8559
41 巻, 3 号
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原著
  • 奥田亜 紀子, 樋口 壽宏, 久保 のぞみ, 中村 しほり, 山内 綱大, 児嶋 真千子, 小薗 祐喜, 関山 健太郎, 吉岡 弓子
    2023 年41 巻3 号 p. 251-257
    発行日: 2023/07/25
    公開日: 2023/08/30
    ジャーナル フリー

    転移・再発乳癌の遠隔転移は原則的に外科的切除は適用されない.我々は転移性卵巣腫瘍組織におけるエストロゲン受容体(ER),プロゲステロン受容体(PgR),ヒト上皮成長因子2(HER2)からなるバイオマーカー発現の免疫組織学的検索が再発乳癌治療の一助となった症例を経験した.49歳,41歳時に左浸潤性乳管癌で左乳房温存術を施行されER・PgR陽性であったため,術後は放射線治療,LH-RHアゴニスト(LH-RH a)療法,タモキシフェンクエン酸塩を5年間服用した.術後6年10カ月で多発骨転移が判明し,LH-RH a療法および放射線治療,アロマターゼ阻害薬投与が開始された.LH-RH a療法開始後に増大傾向を伴う右卵巣腫瘤が出現したため乳癌術後8年で当科を受診した.MRI検査では一部充実部分を認めるものの悪性を強く疑う所見に乏しく,腹腔鏡下両側付属器切除術を行った.術後病理診断はER陽性の浸潤性乳管癌転移であった.新規内臓病変が出現したため,新たな内分泌療法としてfulvestrant(選択的エストロゲン受容体抑制薬)及びpalbociclib(CD4/6阻害剤)を導入,術後約1年間病勢制御が可能であった.本手術による外科的永久閉経によりLH-RH a投与が不要となると共に,再発病巣のバイオマーカー評価に基づく再発乳癌の治療戦略を立てる上で有用な外科的介入となった.

症例報告
  • 藤井 えりさ, 宇野 雅哉, 加藤 真弓, 棚瀬 康仁, 石川 光也, 加藤 友康
    2023 年41 巻3 号 p. 258-263
    発行日: 2023/07/25
    公開日: 2023/08/30
    ジャーナル フリー

    術後乳糜胸水は胸部外科領域より多数報告があるが,婦人科領域では国内外から報告はない.卵巣癌傍大動脈リンパ節郭清後に乳糜胸水を生じ,保存的加療で治癒した2例を経験したため報告する.

    【症例1】45歳,既往特記なし.傍大動脈リンパ節郭清を含めPDS施行し卵巣高異型度漿液性癌IIIA1期pT2aN1bM0と診断.術後6日目に咳嗽と背部痛があり右胸水貯留を認めた.利尿薬で改善なく12日目に胸腔ドレーン留置,乳糜胸水の診断で保存的加療した.48日目にドレーン抜去し再貯留なく経過.

    【症例2】44歳,既往特記なし.PDS施行し卵管高異型度漿液性癌IIIA1期pT2aN1bM0と診断.術後6日目に呼吸苦と右胸水貯留を認め利尿薬投与するも,8日目に胸水増加し胸腔ドレーン留置.乳糜胸水の診断で保存的加療したが改善なく,35日目にリンパ管造影を施行するも破綻部は同定されなかった.ドレーン管理下に化学療法施行,術後約半年でドレーン抜去,再貯留なく経過した.乳糜胸水を呈した原因として,腹部大動脈周囲から横隔膜脚へ向かうリンパ管の走行が報告されており,その存在により本症例のような病態を生じうると推察された.

  • 伊藤 拓馬, 堀川 直城, 牧尾 悟, 吉田 旭輝, 黒田 亮介, 西村 智樹, 田中 優, 楠本 知行, 福原 健, 赤池 瑶子
    2023 年41 巻3 号 p. 264-269
    発行日: 2023/07/25
    公開日: 2023/08/30
    ジャーナル フリー

    高カルシウム血症型卵巣小細胞癌(Small-cell carcinoma of the ovary, hypercalcemic type:SCCOHT)は若年女性に好発する稀な腫瘍であり,予後は極めて不良である.今回,小児期に初回治療を行い,その16年後に対側卵巣に発生し異時性多発と考えられたSCCOHTの1例を経験したため報告する.症例は30歳,未妊.14歳時に卵巣原発primitive neuroectodermal tumor(PNET)に対して左付属器摘出術および術後化学療法(vincristine+cyclophosphamide+etoposide+cisplatin)を施行され,以後再発なく経過していた.30歳時に腹痛を主訴に受診し,11 cm大の右卵巣腫瘍を認めPNETの再発が疑われた.腫瘍減量手術を施行したが,腹腔内に1 cm未満の播種が遺残した.病理診断でSMARCA4/BRG1の免疫染色の結果からSCCOHTと診断され,初発時の病理組織を再検討した結果同様の病理所見であり,異時性多発と考えられた.cisplatin+etoposideによる術後化学療法を2コース施行したがPDとなり,術後3カ月半で原病死に至った.小児期に発症した悪性卵巣腫瘍はSCCOHTを鑑別に挙げて診断・治療を行い,異時性再発のリスクがあるため長期間の継続的な観察が必要であることが示唆された.

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