日本婦人科腫瘍学会雑誌
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ワークショップ4
当科で経験した卵巣悪性腫瘍合併妊娠の4例
牧野 吉朗宮本 真豪小倉 慎司宮上 哲折坂 勝市塚 清健長塚 正晃
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2024 年 42 巻 2 号 p. 147-158

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抄録

概要:妊娠関連がんは妊娠出産の高年齢化に伴い近年増加傾向であり,その頻度は約0.1%と報告されている.特に,妊娠中の卵巣悪性腫瘍の診断は困難なことが多く,さらにその治療に明確なエビデンスはない.当院で過去12年間に11,811分娩中3例と他院分娩1例の境界悪性腫瘍を含む妊娠関連卵巣・腹膜がん4例を経験した.境界悪性2例と悪性2例で,境界悪性2例はIA期で妊娠15~16週に患側付属器切除と大網部分切除を施行し無再発生存している.悪性1例目は明細胞癌IC1期で,妊娠13週に患側付属器切除術と大網部分切除を施行し,術後TC療法5コース施行,妊娠40週帝王切開で健児を得た.2例目は帝王切開時に偶発的に診断した腹膜癌IIB期で,分娩後よりTC療法を施行したが,診断より3年3カ月で原病死した.

妊娠中の卵巣悪性腫瘍の診断および治療は未だ確立されていないが,妊娠中であっても非妊時と同様の手術や化学療法の安全性が証明されつつある.母体生命を最優先にしつつも,胎児への影響や患者と家族の意向も考慮し症例ごとに治療方針を決定していく必要がある.

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© 2024 日本婦人科腫瘍学会
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