日本婦人科腫瘍学会雑誌
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妊婦検診で確認された子宮間葉性腫瘍の腫瘍学的特徴の解析
林 琢磨天野 泰彰岡田 茉子安彦 郁小西 郁生
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2024 年 42 巻 2 号 p. 159-167

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抄録

概要:子宮平滑筋腫は,性成熟期の女性に最も多く認められる良性の子宮間葉性腫瘍である.昨今の晩婚化や出産年齢の高齢化に伴い,子宮平滑筋腫に合併した妊娠(つまり,子宮平滑筋腫合併妊娠)の症例は,増加傾向にある.超音波診断法での検査を主とする最新の臨床学的統計では,子宮平滑筋腫合併妊娠の症例数は,全妊娠の症例の2.7~10.7%に認められると報告されている.子宮平滑筋腫合併妊娠では,妊娠中に子宮平滑筋腫の変性や捻転に伴う痔痛が認められる.また,子宮平滑筋腫の存在が,流早産や常位胎盤早期剥離,前期破水,胎位・胎勢の異常胎児発育不全など原因になることが知られている.また,分娩時には子宮平滑筋腫による産道通過障害や子宮収縮不良に伴う微弱陣痛による分娩停止が認められる.さらに,頻度は少ないが,妊娠中又は妊娠後に腫瘤が急激増大する例が認められ,このような症例では,高い確率で子宮平滑筋腫と併発している子宮平滑筋肉腫の発症が認められる.著者らは,子宮平滑筋腫合併妊娠の産後の経過観察中に急激に腫瘤が増大したため,単純子宮摘出術により子宮摘出を行った.その後の外科病理診断により,摘出腫瘍は子宮平滑筋肉腫と診断された.単独発症の子宮平滑筋腫と比較して,子宮平滑筋腫合併妊娠での子宮平滑筋腫では,有糸分裂細胞が多く認められる.妊娠環境と子宮平滑筋肉腫の発症の関連性を理解するために,私達は,子宮平滑筋肉腫自然発症モデルマウスを用いて,妊娠環境の子宮間葉性腫瘍の悪性化への関与について検討を行っている.本稿では,妊娠と悪性の子宮間葉性腫瘍の発症との関連性について,最新の医学情報を含めて解説を行う.

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© 2024 日本婦人科腫瘍学会
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