概要:公益社団法人 日本婦人科腫瘍学会は,1975年8月に設立された「日本コルポスコピー研究会」を源流として「日本子宮頸部病理・コルポスコピー研究会」,「日本婦人科病理・コルポスコピー学会」へと発展し,さらに「日本卵巣腫瘍病理研究会」と合流した後,婦人科腫瘍学の先導者となるべく1998年7月に「日本婦人科腫瘍学会」と名称を定めたことがその礎となる.その後,「子宮癌研究会」,「日本婦人科悪性腫瘍化学療法学会」,「日本産婦人科腫瘍マーカー・遺伝診断学会」の4つの組織が加わって統合され,2013年11月に現在の組織へと発展した.この間,野田起一郎名誉会長のご教授の下,本学会への統合に全力を傾けられた故野澤志朗教授を初代とし,現在の三上幹男教授まで11人の歴代理事長の下で進化を遂げながら,2023年7月に創立から四半世紀を迎えた.
2019年12月に始まった新型コロナウイルス感染症の歴史的パンデミックの最中に私が理事長を2年間務めたが,新しい「学会のかたち」を創造する好機でもあった.特に,コンピュータや情報通信等の技術的シーズと様々な社会的ニーズはコロナ禍の中で電子社会システムの構築と実践を加速させ,本学会においても迅速な対策が求められた.本学会の活動の主軸は婦人科腫瘍専門医の養成と婦人科がん治療ガイドラインであるが,2007年以降,指定修練施設で1,259名(男性:971名,女性:288名)が専門医資格を取得し,2002年から5つのガイドラインが順次改訂されている.この基盤の上に,理事会がナビゲートし30代・40代の若い力がエンジンとなって,IT社会における新たな活動を展開している.主な事例として,1)ホームページの一新と英語版の併設,2)婦人科がんに関する患者向けアニメーション動画の公開,3)タレントのSHELLY氏との対談記事のデジタル紙への掲載が挙げられるが,これらに共通することは公益性を念頭においた社会への発信である.さらに,会員に向けて,4)和文誌の電子ジャーナルへの移行,5)教育を目的としたウェブセミナーの定期開催とアーカイブ化した「JSGO E-academy」のホームページ上の公開,6)婦人科腫瘍診療におけるCOVID-19感染対策と実態調査の実施がある.学会の強化策として,7)婦人科以外の関連領域との連携促進による会員増加の模索,8)コロナ禍後の学術講演会の理想的な在り方の検討,さらに最大の事業である9)日本の婦人科悪性腫瘍患者の全データを掌握することを目標にしたJapan Entry System for Gynecologic Oncology(JESGO)の創設,10)創立25周年記念事業における企画書籍の出版などがあるが,いずれも次世代による斬新なアイデアである.
第64回学術講演会(2022年7月:久留米市)の理事長講演でも述べたように,可能を不可能にしてしまう先入観に囚われない,気力,体力,知力の最も充実した若い力による,時代に相応した発想と時代を超越した奇想に託し,今や3年から5年の短い周期で目まぐるしく変動する社会において,次世代が躍進し公益性を推進する「学会のかたち」を常に展望しながら,本学会がアカデミック集団として多様な形態と大胆な創造性をもって機能することが肝要である.
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