日本婦人科腫瘍学会雑誌
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シンポジウム1
国立がん研究センター中央病院における婦人科がんに対するがんゲノムプロファイリング検査の現状
中原 万里子西川 忠曉山本 香澄加藤 真弓棚瀬 康仁宇野 雅哉石川 光也加藤 友康
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2024 年 42 巻 2 号 p. 57-66

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抄録

概要:<目的>当院での婦人科がんに対するがんゲノムプロファイリング(Comprehensive Genomic Profiling:CGP)検査の臨床的有用性を検討する.

<対象と方法>2019年10月~2023年3月に当院でCGP検査を実施した婦人科がん症例におけるactionableな遺伝子異常とバイオマーカーの検出状況について,診療録を用いて後方視的に検討した.Actionableな遺伝子異常は患者申出療養制度を含む臨床試験への参加が可能な遺伝子異常とし,バイオマーカーは保険適用薬のあるMSI-High/TMB-High/NTRK融合遺伝子とした.

<結果>対象症例は164例で,年齢中央値56歳(23~78歳),がん種は卵巣癌・卵管癌・腹膜癌 68例,子宮体部悪性腫瘍60例,子宮頸癌36例であった.事前のMSI-High検出例は,子宮体部悪性腫瘍5例であった.Actionableな遺伝子異常の検出例ならびにバイオマーカーの検出例はそれぞれ,全体で77例(47%)/19例(12%),卵巣癌・卵管癌・腹膜癌で32例(47%)/3例(4.4%),子宮体部悪性腫瘍で32例(53%)/12例(20%),子宮頸癌で13例(36%)/4例(11%)であった.CGP検査結果に基づく治療への到達例数は,全体で8例(4.9%)であった.

<結論>Actionableな遺伝子異常は47%に検出され,バイオマーカーは 12%に検出されたが,臨床試験を含めた治療への到達率は4.9%であった.今後は,さらなる治療到達率の改善にむけた取り組みが必要と考えられた.

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