日本婦人科腫瘍学会雑誌
Online ISSN : 2436-8156
Print ISSN : 1347-8559
症例報告
タモキシフェン投与中に子宮体癌を発症し,偶発的に乳癌の子宮漿膜・卵巣・骨盤リンパ節転移が明らかとなった浸潤性小葉癌の1例
茅橋 佳代八十島 巌道倉 瑛里奈田中 有華坂井 友哉鈴木 拓馬笠間 春輝神田 龍人飯塚 崇山崎 玲奈
著者情報
ジャーナル フリー

2025 年 43 巻 3 号 p. 96-102

詳細
抄録

概要:乳癌の婦人科臓器転移は比較的稀である.今回我々は初期子宮体癌と同時に乳癌の遠隔転移を来した症例を経験したので報告する.症例は47歳,乳腺浸潤性小葉癌の初回治療後に当科紹介となり,タモキシフェン投与中半年に一度検診を行っていた.タモキシフェン開始後15カ月で子宮内膜肥厚を認め,子宮内膜細胞診にて腺癌細胞を指摘された.子宮内膜全面掻爬術を施行し,病理組織検査では類内膜癌G1~G2の結果であった.画像検査ではリンパ節腫大や遠隔転移を疑う所見を認めなかったため,子宮体癌IA期の診断にて全腹腔鏡下子宮全摘術+両側付属器切除術+骨盤リンパ節郭清術を施行した.病理検査の結果,子宮内膜に癌は認めず,乳癌の子宮漿膜転移,両側卵巣転移,骨盤リンパ節転移を指摘された.子宮内膜全面掻爬術の結果も併せて,子宮体癌IA期,再発乳癌の診断となった.乳癌の中でも特に浸潤性小葉癌は婦人科臓器への転移や腹膜播種が多く,浸潤性小葉癌既往の症例では,婦人科手術時に腹膜播種や子宮・卵巣転移の有無には注意を払い,播種や転移を疑う所見を認めた場合には,原発巣同定のための生検や低侵襲手術に方針を変更することも選択肢と考えられる.

著者関連情報
© 2025 日本婦人科腫瘍学会
前の記事 次の記事
feedback
Top