2026 年 44 巻 3 号 p. 196-202
概要:進行卵巣癌では,治療方針決定における病理組織診断や分子プロファイル評価のため,審査腹腔鏡での組織採取が広く実施されているが,全身麻酔を要し周術期リスクを伴う.当科では低侵襲な針生検を実施している.本研究では,その診断的有用性と安全性を審査腹腔鏡と比較し,分子検査および予後への影響を検討した.2021年1月から2023年12月までに術前化学療法後に腫瘍減量術を実施した進行卵巣癌21例を対象とし,針生検群(10例)と審査腹腔鏡群(11例)に分け,治療開始までの期間,合併症,腫瘍含有率,治療成績および予後を後方視的に解析した.病理組織診断は全例で可能であった.HRD検査の判定成功率は針生検群70%,審査腹腔鏡群91%であり,腫瘍含有率30%以上に限定した場合,針生検群の86%で実施可能であった.針生検群では重篤な合併症は認めず,二群間で無再発生存期間および全生存期間に有意差は認めなかった.針生検は進行卵巣癌症例において高い安全性を示し,病理組織診断およびHRD検査において審査腹腔鏡に劣らない有用性を示した.適切な症例選択により,診断精度や予後を損なうことなく,迅速な治療開始が可能となり得る.