2009 年 43 巻 4 号 p. 3-11
本研究では,バルダッサーレ・ペルッツィが描いた「喜劇のための舞台画の習作」(1515年頃)に着目し,ルネサンス期イタリアにおける透視図法の簡便化の一様相を明らかにする.この「喜劇のための舞台画の習作」は,現在,トリノの王宮図書館によって所蔵されていて,3層構成をもつ建物のファサードが遠近感を有するように描かれ,都市景観の一部分が表現されているものである.考察手順は以下の通りである.(1)この図の消点の位置を求める.(2)消点と水平線の位置,建物と街路との境界線,そして,ファサードと軒との境界線をもとに,作図線を明らかにする.(3)これらを総合して鑑み,作図法を想定する.そして,以下のような結果が導かれた.「喜劇のための舞台画の習作」においてペルッツィが用いた作図法は,2次元画面上に基準となるグリッド線を設定することによって,遠近感を表現するものであったと結論づけられる.