抄録
平成10(1998)年の学習指導要領改訂では,天文分野の学習が中学1年生から中学3年生に移行された.その結果,小学5年生から中学2年生までの4年間は天文分野が学習されないことになった.一方で,このような変更に伴う児童・生徒の空間認識への影響については,詳細なデータが不足している.本稿では,1985年及び2007年当時の小・中学生の空間認識として球形概念や左右概念等を調査し,天文分野のカリキュラムとの関係について考察した.主要な結果は以下の通り.(1)半球概念は小学5年から中学2年まで2007年の方が正答率が概ね低い.(2)球形概念は, 左右概念ほど天文単元学習後正答率が下がらない.(3)天文を学習しない小学5年から中学2年の間も空間認識が向上しており,他の影響が考えられる.(4)中学3年時で比較すると各概念とも2007年は,1985年と比べて同等以上である.