2019 年 53 巻 2-3 号 p. 10-
現在木彫において角材から模刻像を彫り出していくためには,図面を角材の面に転写して,その輪郭線をシルエット状に削り出すことがよく行われている.ある程度彫るべき形が明らかになる一方で,角材の平面に描いた下図といった作業の手引きとなる基準が彫り進めるとともに当然失われていくことになり,初学者においては一定の段階から手が進まなくなることが多い.本研究では,3Dデータを自由な位置や角度によって閲覧し,木材の頂点を含む角や辺となる稜線を切断して平面をつくり出す面取り作業をコンピュータ上でシミュレーションすることで,模刻像の概形となる粗取り段階までの工程を事前に検討する.また原本像と角材から切断したモデルとの体積比などから木彫による模刻の確度,効率性についても言及する.