本研究の目的は,実際の空間で建築図面と照らし合わせて自分の位置を把握できる能力(建築図面の読図能力)について,建築学生と非建築学生の差異を明らかにすることである.さらに建築学生について,履修科目の成績との関連について知見を得ることで,建築学生の建築図面の読図能力の涵養過程を明らかにする.研究方法は,被験者を大学に所属する建築学生と非建築学生として,個性的な間取りとなっている一戸建て住宅を実験場所とした追跡調査と質問紙による調査を行うことによる.研究の結果,一般市民の建築図面の読図能力の習得は建築系大学の2年生(短大や専門学校)程度の建築専門教育が必要となることが明らかとなった.公共建築の市民共創の観点では,建築図面の読図能力は,中・高等学校の家庭科の範囲内では定着できていないと考えられた.