図学研究
Online ISSN : 1884-6106
Print ISSN : 0387-5512
ISSN-L : 0387-5512
人体のソマトタイプと幾何学的特徴
堤 江美子相原 多恵飯岡 直美
著者情報
キーワード: 形状処理, 曲面, 体形分類
ジャーナル フリー

1997 年 31 巻 Supplement 号 p. 127-132

詳細
抄録

人体の外形のから判断される体つきが、どのように生物学的妥当性をもった特徴と一致しているのか調べるために、成人女子68名の体幹部を対象に三次元計測と生体計測を行い、佐藤の「一般形状に関する5つの擬距離尺度」による体形分類と、生体計測直から計算できるように修正を加えたSheldonの「器官発生にもとづくソマトタイプ」による体型分類との関係を検討して視覚的な体つきの類型について考察した。佐藤の擬距離尺度のクラスタ分析からは、物体の垂直方向の長さの変異について体幹部の「細長/短厚」が、物体断面の局部的な大きさの相違については「肩部や胸部、胴部など局部的な発達の違い」が、物体の垂直軸からのずれ具合については「姿勢」が、そして「断面の形状の変異」もあわせて4つの特徴が外形より解釈された。また、ソマトタイプからは「多くの脂肪を蓄えた特有の丸みを帯びた体型」、「がっしりした肩部と胸部を備え、四肢は固い筋肉からなる体型」、「ほとんど筋肉や脂肪をもたず、神経系が発達している体型」が生体計測直から算出された。擬距離による各形状特徴について、クラスタ間のソマトタイプの平均値の差の検定を行った結果、外形の見え方と実際の生物学的な内容との間の関連性について以下のような結果を得た。
(1) 細長/短厚に相当する特徴は、骨や筋、特に筋の発達と関連性があり、肩部や胸部の充実したがっちりした体つき、あるいは、その逆がこの特徴を印象づける大きな要因と考えられた。
(2) 肩・胸・胴部のプロポーションの違いに相当する特徴は、脂肪・筋肉を合わせた充実度と関係があるようだ。
(3) 姿勢の変異に相当する特徴は、骨や筋、特に筋の発達と関連性があり、一般に、姿勢の悪さは主として脊柱の前弯の強さと受け取られがちだが、背面における筋や脂肪の充実具合もその一因であることが理解された。

著者関連情報
© 日本図学会
前の記事 次の記事
feedback
Top