抄録
メンタル・ローテーション・テストをネットワーク環境のパソコンで実施して得られた解答過程データから, 各選択肢の判断消費時間が誤判断消費時間に占める割合を算出し, 低得点者の誤答傾向について考察した.誤判断消費時間に対して, 特定の選択肢の誤判断消費時間の割合が高い誤答に着目して, そのような誤答がどの被験者に多いか, どの問題で多いかを分析した.3名の低得点者に共通する傾向として, 他の選択肢ほど選択肢4に判断時間をかけずに誤答する点が示された.これらの低得点者は, 選択肢3までの異同判断が不正確にもかかわらず, 選択肢4をおざなりに解答していることが誤答を引き起こしていると思われる.2名の低得点者に共通する傾向として, 基準図形と同じ選択肢を「異なる」と誤判断するよりも, 基準図形と異なる選択肢を「同じ」と誤判断することに時間を費やす点が示された.また, 遮蔽による形状の把握しにくさと正誤判断に要する心的回転角度が大きいことが同時に生じている選択肢で, 極端に判断時間がかかって誤りを起こす低得点者の存在や, 基準図形と選択肢図形の輪郭の類似性による紛らわしさが一部の低得点者に影響を与える可能性が示唆された.