抄録
切断面実形視テスト (MCT: Mental Cutting Test) における被切断立体や切断面の幾何学的形状の複雑さと、被験者のパフォーマンス (誤答率や解答時間) との関連を明らかにするために、まず、2次元図形の幾何学的な複雑さを記述する際に、従来から用いられてきた幾つかの断面パラメータをMCTの切断面形状に適用してそれらの値を求めた。次に、切断面図形のパス方向に関する変化を記述する断面エントロピーなどの指標を定義することで、被切断立体の複雑さを定量化することを試みた。これらの断面パラメータ、および、断面エントロピーの指標値とMCTの客観的難易度 (誤答率) や心理的難易度 (解答時間) との相関関係を比較、検討した。その結果、断面パラメータ、および、断面エントロピーと各MCT問題の誤答率との間には、特に高い相関は見られなかったが、これらの指標値と各問題の解答時間との間には、比較的高い相関を示すものが多く見られた。断面パラメータの中では、角形数、および、内角分布の分散などと解答時間との間に比較的高い相関が見られた。また、断面エントロピーに関しては、角形数や周長のエントロピーと解答時間との間に比較的高い相関関係が見られた。以上のことから、MCTの立体や切断面形状の複雑さは、MCTの客観的難易度を表す誤答率より、心理的難易度を表す解答時間に、大きな影響を与えることがわかった。