図学研究
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ルネサンス期のイタリアにおける実践的透視図法の展開
―バルダッサーレ・ペルッツィの舞台背景画における作図法―
奈尾 信英
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2005 年 39 巻 Supplement2 号 p. 1-6

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抄録

本研究は, ルネサンス期のイタリアにおいて活躍した建築家バルダッサーレ・ペルッツィの実践的透視図法のひとつを明らかにするものである。ペルッツィは, シエナにおいて幼い頃から画家として修業を積んでいたが, 最終的にはローマに赴き, サン・ピエトロ大聖堂の主任建築家となった人物である。本稿で分析対象とした図は, 1515年頃に描かれた舞台背景画「喜劇のための舞台背景画の習作」である。この図は, 現在, トリノの王宮図書館に所蔵されていて, 3層構成をもつ建物のファサードが遠近感を有するように描かれ, 都市景観の一部分が表現されているものである。考察手順としては, はじめに, 消点の位置を求める。つぎに, 消点と水平線の位置, 建物と道路との境界線, 壁と軒との境界線などをもとに, この図における作図線を明らかにする。さらに, それらの作図線の交点を鑑み, この図で用いられたであろう作図用の下書き線を想定する。考察の結果, この「喜劇のための舞台背景画の習作」で用いられた作図法は, 2次元画面上に基準となるグリッド線を設定することで, 遠近感のある透視図風の表現を実現するものであり, 容易に3次元空間を描くための作図法であったと考えられる。

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