図学研究
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ル・コルビュジエの空間イメージの表出―主観的把握と客観的把握の併用―
加藤 道夫
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2006 年 40 巻 Supplement2 号 p. 63-68

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抄録
ル・コルビュジエは旅行スケッチや建築設計過程において通常の遠近法に従わないスケッチを残している. 本研究では, これらのスケッチの特性を彼の著書『建築へ』における「軸線」の記述と対応させて分析し, 以下の仮説を検証した. 1) 彼のスケッチには「軸線」という読みとられた秩序が内包されている. 2) 彼のスケッチには「軸線」の把握の結果, 何らかの形で空間に歪みが生じている. 3) 彼のスケッチにおける「壁」の表現を見ることで, 読み取られた秩序, すなわち「軸線」が理解できる. 以上の特性は, 彼独自の空間了解の形式, 特に視線方向に特化した主観的空間把握に基づくといえる.一方で平行投影を用いて, 物理的距離を正しく表現する客観的把握も併用する. つまり, ル・コルビュジエのスケッチにおいては, 主観的把握における透視図風スケッチ, 客観的把握における直投影図という二つの図法の使い分けが見られることを明らかにした.
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