抄録
パソコン上で作動する音声情報のない避難シミュレータを用いて避難体験をおこなった.音声情報がないことは視覚情報のみで避難をおこなわなければならない.これは聴覚障害者が視覚情報のみで避難することに類似していることから, 聴覚障害者の擬似体験として位置付けられる.本稿では避難行動の軌跡の類型化をはかると共に写真判別法による空間把握の特徴について分析した.その結果, 避難行動軌跡は成功者では13種類, 失敗者では16種類に分類することができた.また, 両者の避難行動軌跡は, それぞれ主に5種類であることが明らかになった.さらに, 写真判別法による空間把握においては成功者と失敗者間には統計的な有意差は認められないが, 失敗者よりも成功者の正答率は高くなる傾向を示した.