抄録
本研究では,生活診療圏の考え方を探ることを目的に,県境を越えた医療圏外への受診が多い三重県桑名市を対象として,住民の受診行動と意識についてのアンケート調査を実施した(回答数1,534名,回収率51.1%)。 県境を越えて愛知県の厚生連海南病院を受診する住民が一定数おり,特に愛知県に隣接する旧長島町地区でこの特徴が顕著であった。救急時の受診,日常的な通院ともに,愛知県の医療機関を受診することに抵抗感がない人が6割以上で,桑名市民がしばしば受診する愛知県内の医療機関に対して桑名市が財政支援を行うことに対しても「了解できる」が55.7%で過半数を占め,「了解できない」(33.9%)を上回った。受診行動のみならず財政支援についても行政区分にとらわれていない住民が多い。地域特性や歴史的背景などにより,県境を越えた生活診療圏が現に形成されていると推測され,県を越えた医療計画の策定が課題であろう。