日本医療・病院管理学会誌
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50 巻, 2 号
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巻頭言
研究論文
  • ——病院と特別養護老人ホームの比較&mdash&;mdash;
    池上 直己, 池崎 澄江
    2013 年50 巻2 号 p. 127-138
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/03
    ジャーナル フリー
    死亡場所による終末期ケアの質を比較するため,遺族を対象としてTenoらの痛みへの対応,医師とのコミュニケーション,総合評価等の質問表を用いて郵送調査した。対象はK市の精神科病院を除く全5病院,及び全国から抽出した653の特別養護老人ホーム(特養)であり,前者は205名(回収率48.0%),後者は92施設より256名(同63.2%)の回答を得た。病院と特養の施設内死亡者を比べると,特養の方が質は高い傾向であった。アメリカと比べると,病院は分野により異なり,特養はナーシングホームよりもほとんどの分野で質は高かったが,総合評価はいずれも日本の方が低かった。次に,病院の1年以上介護を要した者,特養から病院に入院して死亡した者,特養の施設内で死亡した者を比べると,特養施設内死亡者の質が最も高く評価された。今後,死亡する場ではなく,終末期ケアの質に着目するべきである。
研究論叢
  • 杉山 正樹
    2013 年50 巻2 号 p. 139-147
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,医療イノベーションの創出に特化した病院経営モデル—イノベーション特化型病院経営モデル(以下,イノベーション型)の紹介と,そのモデル化に関する研究報告である。イノベーション型は,欧米を発祥とし,メディカル・クラスターを組成する病院経営モデルである。イノベーション型は,今後,医療産業創発の重要な担い手として,期待が持たれる革新的な病院経営モデルである。わが国では,2003年以降,神戸医療産業都市構想および(旧)知的クラスター創成事業と産業クラスター計画において,欧米のイノベーション型に関する本格的な調査・検討がなされ,同モデルの展開・定着が始まった。本研究では,イノベーション型の,①構造,②事業化条件,③医療イノベーション・スキーム,などを調査しモデルの先鋭化を試みた。更に,わが国の代表的なイノベーション型—神戸医療産業都市の戦略上の課題を析出し考察を行った。
研究資料
  • ——患者属性と在院日数・医療資源投入量の関係——
    椎野 優樹, 高橋 武則
    2013 年50 巻2 号 p. 149-157
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/03
    ジャーナル フリー
    病院の収入構造の変化は診療内容を変化させ,在院日数・医療資源投入量に影響を与える可能性がある。DPC/PDPS導入による収入構造の変化に着目し,DPC「脳梗塞(JCS 30未満,手術なし,手術・処置1・2なし,副傷病なし)」を対象に,DPC/PDPS導入後の在院日数・医療資源投入量の変化を調査した。また在院日数・医療資源投入量と患者属性の関係の変化を確認するためにパス解析を行った。
    DPC/PDPS導入後,在院日数は短縮し,患者の8割以上が特定入院期間を超えない範囲で退院するようになった。また2010年度には診療報酬改定の影響から,2009年度に比べ在院日数が延長した。その結果パス解析において,患者属性の在院日数への影響は見られなくなった。医療資源投入量は転院や外来診療との連携により,入院中に重点的に投入される項目とそうでない項目に分けて対応されたことが示唆された。以上から,診療内容は医療機関の利益責任を通じて収入構造の変化に影響を受けることが示唆された。
  • ——帝王切開分娩の母とその児を対象として——
    桵澤 邦男
    2013 年50 巻2 号 p. 159-168
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/03
    ジャーナル フリー
    産科の緊急入院が病院経営に与える影響を明らかにすることを目的として,公的病院Aにおける12か月間のDPCデータ等を対象に,帝王切開分娩症例の診療報酬を出来高からDPCへ移行した場合における,予定入院と緊急入院の比較分析,診療報酬に影響を与える要因分析,出生児が病児となり入院した場合の分析,を実施した。その結果,DPCへ移行した場合の診療報酬は,緊急入院で約1%の減収が見込まれたが,予定入院で約3%の増収が見込まれた。出来高払いからDPCへ移行した場合に診療報酬が減少する要因として,緊急入院が挙げられた。出生児が小児科へ入院した場合の診療報酬は, 母の緊急入院で約8%の減収,母の予定入院で約12%の減収が見込まれた。 DPC下の帝王切開分娩は,予定入院と緊急入院との比率のバランスに配慮し,緊急入院などの経営的に不利となる症例の出現頻度や減収額をモニタリングすることなどが重要であると考えられた。
  • 高井 智代, 加藤 憲, 天野 寛, 宮治 眞, 藤原 奈佳子, 内藤 道夫, 高見 精一郎, 伊藤 健一, 横井 隆, 柵木 充明
    2013 年50 巻2 号 p. 169-180
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/03
    ジャーナル フリー
    本研究では,生活診療圏の考え方を探ることを目的に,県境を越えた医療圏外への受診が多い三重県桑名市を対象として,住民の受診行動と意識についてのアンケート調査を実施した(回答数1,534名,回収率51.1%)。 県境を越えて愛知県の厚生連海南病院を受診する住民が一定数おり,特に愛知県に隣接する旧長島町地区でこの特徴が顕著であった。救急時の受診,日常的な通院ともに,愛知県の医療機関を受診することに抵抗感がない人が6割以上で,桑名市民がしばしば受診する愛知県内の医療機関に対して桑名市が財政支援を行うことに対しても「了解できる」が55.7%で過半数を占め,「了解できない」(33.9%)を上回った。受診行動のみならず財政支援についても行政区分にとらわれていない住民が多い。地域特性や歴史的背景などにより,県境を越えた生活診療圏が現に形成されていると推測され,県を越えた医療計画の策定が課題であろう。
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