本研究は,全国の急性期病院におけるせん妄患者への頓用向精神薬投与時の看護師の困難感を明らかにすることを目的に行った。看護師の薬剤の投与過程で必要とされる判断の困難感7項目を含む無記名自記式調査票を独自に作成した。調査票は,調査協力に同意の得られた全国の116病院3,848名の看護師に配布し,個別返送で回収した。その結果,1,958名分 (50.8%) が回収され,有効回答は1,748名(有効回答率45.4%)であった。せん妄患者への頓用向精神薬投与時の看護師の困難感は,具体的な判断が求められる薬物療法の必要性の判断,具体的な薬剤の選択,投与量・速度の判断で,「やや難しい」,「とても難しい」との回答の合計が68.4%から79.5%を占めていた。本研究の結果から,せん妄患者への頓用向精神薬の投与をより安全で効果的に行うためには,看護師をはじめとした医療職に対する向精神薬に関する教育や頓用向精神薬の指示形態の整備などを含め,せん妄に対する組織的取り組みを整備・普及させていくことが必要と考えられた。