看護師の賃金制度のあり方を多面的かつ定量的に検討することを目的に,A県の医療法人B会の利害関係者を対象にして多面的事業評価手法(Multiple-Attribute Utility Technology)を用いて評価を行った。評価対象の賃金制度は,年功給,職務給,職能給の3つで,評価項目として10項目を設定し,利害関係者を当事者レベル,組織レベル,産業全体のマクロレベルへと段階的に拡大して各段階で評価した。その結果,当事者レベルと組織レベルでは年功給が最も高い効用値を示したが,産業全体のマクロレベルでは職務給が最も高い効用値を示した。医療を提供する側だけの意見を反映した閉鎖的な賃金制度とならないようにするために患者などの外部の視点を需要側の意見として反映させた結果,看護師にとって最も妥当な賃金制度は職務給であることが示唆された。