抄録
胎児の状態を知るために妊婦に対して行われる検査、いわゆる出生前検査において、その是非をめぐって多くの議論がなされてきた。特に母体血清マーカー検査については、検査の持つ特徴から「医師は検査の情報を積極的に知らせる必要はない」という内容を盛り込んだ通知が厚生省(現厚生労働省)より出されている。こうした中でなされる受検の決定要因について、筆者らが行ったアンケート調査をもとに分析を行った。その結果、受検の決定要因として、医師からの情報提供、予定した(望んだ)妊娠か否か、医師以外からの情報入手、検査を受けた時の年齢などが有意と見られた。学歴、信仰、これまでの妊娠回数、妊娠中の不安などは有意な要因とはならなかった。医師が検査の情報を知らせることが妊婦の受検を促しているが、同時に妊婦による妊娠の受け止め方や医師以外からの情報入手も受検に影響を及ぼしていることが明らかになった。