2016 年 27 巻 1 号 p. 51-61
本稿は、社会学の一潮流であるエスノメソドロジー&会話分析(EMCA)研究が、保健医療における様々な実践にたいしてどのようにアプローチしてきたのかを、メディアの利用、ならびに臨床への介入的な貢献という角度からレビューし、保健医療のEMCA研究の意義の一端を描くことを目的とする。検討の結果、第1に、利用可能なメディアの拡張に合わせて、EMCA研究がアプローチすることのできる保健医療の実践が大きく広げられてきたことが確認できた。そして、第2に、広い意味で直接的な観察をとおした実践の秩序の分析的解明を主眼とするEMCA研究が、何らかの点でその解明に基づきながら、臨床の現場に多様な形で介入的な貢献を果たすということは、可能であるばかりでなく、既にそれなりの規模において展開されていることを確認した。