保健医療社会学論集
Online ISSN : 2189-8642
Print ISSN : 1343-0203
ISSN-L : 1343-0203
特集 保健医療社会学論集のこれまでを振り返り、今後を展望する
保健医療社会学的な価値の発見と知見の創造への期待
伊藤 美樹子
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 31 巻 1 号 p. 26-31

詳細
抄録

本学会は研究対象が、「保健医療」と「社会」、あるいは方法論が社会学的という広範囲な研究テーマを許容するゆるさ、豊かさがある。研究テーマや研究者のいずれにも寛容であることが、高度に分化した専門職中心の医学系の学会とは対照的な魅力である。本稿ではそうした学際性を擁する保健医療社会学論集において「保健医療社会学的な価値の発見と知見の創造」への期待とその達成に必要なアカデミックなコミュニケーションの成立のしにくさについて、看護学系研究者という経験から述べた。すなわち、1)医学系研究の範疇で研究を行う人々の間では、「人を対象とした医学系倫理指針」倫理審査受審という研究上の手続きによって何をどの程度説明するべきかについてが統制された一定の基準をもっていること、2)医学系の分野は、文献のデータベースが早くから整備されており、その点、人文社会学系との知的体系によるギャップがあること。3)「新しい」知見や理論の価値を「誰が」どのように認めるのかについても、編集委員会の統制力が比較的小さい本学会では難しさを伴いやすいということである。

著者関連情報
© 2020 日本保健医療社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top