昭和学士会雑誌
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原著
肝細胞癌に対する肝動脈化学塞栓療法施行時の抗菌薬および制吐療法の有効性
仁尾 祐太北原 加奈之鈴木 康介岡﨑 敬之介齋藤 勲下間 祐魚住 祥二郎伊藤 敬義村山 純一郎
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2015 年 75 巻 3 号 p. 337-342

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抄録

肝動脈化学塞栓療法(transcatheter arterial chemoembolization:TACE)は,切除不能進行肝細胞癌に対する標準的な治療であるが,本法施行時の有害事象の発現は,しばしば問題となり,場合によっては治療に支障をきたすことも考えられる.そこで,TACE施行時の有効な支持療法を確立するために,昭和大学病院消化器内科における入院患者のデータを収集し解析した.悪心・嘔吐,肝膿瘍等の有害事象の発現率を調査し,年齢,性別,肝動注抗癌剤の種類,セロトニン(5-HT)3型受容体拮抗薬(以下5-HT3拮抗薬)の投与有無,肝細胞癌の病変部位と悪心・嘔吐の発現の関連をロジスティック回帰分析で解析した.42名の患者を対象とし,使用された抗菌薬は全例でスルバクタムナトリウム・セフォペラゾンナトリウムであった.投与期間の平均は5.7±2.7日で,肝膿瘍の発現がなかったことから,抗菌化学療法は,適切な治療法が実施されていることが示唆された.一方,制吐療法に関しては,9例で悪心・嘔吐が発現し,5-HT3拮抗薬単剤では悪心・嘔吐の発現を十分に抑制できなかった.ロジスティック回帰分析の結果,「5-HT3拮抗薬の非投与」,「肝左葉病変」,「女性」がTACE施行時の悪心・嘔吐の発現に関わる独立した因子として抽出された.今後はさらなる制吐療法の検討が必要と考えられる.

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