遺伝性腫瘍
Online ISSN : 2435-6808
原著
当科における遺伝性乳癌の拾い上げを目的としたプレカウンセリングの取り組み
井上 慎吾 大森 征人木村 亜矢子高橋 ひふみ中山 裕子市川 大輔中込 さと子矢ケ崎 英晃中根 貴弥
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2020 年 20 巻 3 号 p. 131-135

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抄録

山梨大学医学部第1外科では2012年から遺伝性乳癌卵巣癌症候群(hereditary breast and overien cancer syndrome;HBOC)の診療を開始した.発端者は乳腺外科でプレカウンセリングとして,HBOCの概略の説明を受け,希望すれば遺伝カウンセリング外来で遺伝学的検査までの説明を受けている.2012年から2015年までを前期,2016年から2018年までを後期とした.前期のプレカウンセリング対象者は,1.発端者を含め,血縁者内に乳癌罹患者が3名以上いる,2.発端者を含め,血縁者内に卵巣癌罹患者がいる,3.発端者を含め,血縁者内に複数の乳癌罹患者がおり,両側乳癌または40歳未満の乳癌である,4.前記の対象に合致しないが,HBOCの説明を希望するクライエントとした.後期ではプレカウンセリングの説明内容を以下のように変更した.1.BRCA1/2遺伝学的検査の費用が高額かどうかの判断は発端者の価値観に任せる.2.検査陽性の場合は,今後の健康管理への強い動機付けに役立つ.3.検査陰性の場合は,遺伝性乳癌のほぼ半分は否定できるとした.前期と後期のプレカウンセリング実施数は31名と14名で,BRCA検査実施率は6%から36%へと上昇した.プレカウンセリングの説明内容の変更が,BRCA検査実施率の上昇に有効であった可能性が示唆された.

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© 2020 一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会
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