2021 年 21 巻 1 号 p. 7-11
乳がん診療では治療方針を検討するうえで詳細ながん家族歴の調査が不可欠である.浜松医療センター乳腺外科(以下,当科)ではがん家族歴の精度を向上させるべく,従来から用いてきた初診時の問診票に加えて新たな問診票を導入した.初診時の問診票が事務的に渡されたのに対し,新たな問診票は外来看護師ががん家族歴の重要性および家族から直接情報を得るように十分説明したうえで渡すこととした.本研究では初診時に2つの問診票に答えた乳がん患者91例において,初診時の問診票と新たな問診票に記載されたがん家族歴の違いを調べた.結果は91例中50例(54.9%)で初診時の問診票に記載されたがん家族歴数より,新たな問診票に記載されたがん家族歴数のほうが多かった.また,91例のがん家族歴総数は初診時の問診票では89だったのに対し,新たな問診票では171であった.当科では新たに問診票を導入したことでより多くのがん家族歴の情報を得ることができた.がん家族歴は問診票の内容および運用方法によって情報量が変わるため工夫が必要である.