2022 年 22 巻 1 号 p. 17-21
今回,われわれは著明な肝腫大を認める多発性肝囊胞とリンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis;LAM)を合併する結節性硬化症患者に対して子宮体癌の根治術を行った1例を経験した.著明な多発性囊胞腎,多発性肝囊胞を合併する場合,結節性硬化症ではPKD1および隣接するTSC2が欠失した隣接遺伝子欠失症候群が報告されていることを念頭に置き治療にあたる必要がある.著明な肝腫大による影響はもちろん,腎不全,LAM,両側腎血管脂肪腫,多発動脈瘤など多臓器にわたる症候も多くみられ,子宮体癌の手術療法にあたっては,根治性を損なわずに十分な合併症への対応が必要であった.本症例においては、遺伝学的検査を施行していないが、臨床像からTSC2遺伝子に病的バリアントが検出される可能性があり、子宮体癌再発時には包括的がんゲノムプロファイリング検査を行い、個別化医療を検討する必要がある。